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終りのない謎-キース・エマーソンのこと [音楽]

いわゆるプログレッシブ・ロックのバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマーのキーボード奏者であったキース・エマーソンが亡くなった、というニュースに接しました。エマーソン・レイク・アンド・パーマー(以下ELP)はプログレ5大バンドなどのひとつなどとも云われることがあります。あとの4バンドはイエス、キング・クリムゾン、ジェネシス、ピンク・フロイドというわけです。

プログレのキーボード・プレイヤーの中では、ピアノとハモンド・オルガンの演奏にこだわりを持ち続けていた、という点がキースの特徴のひとつでしょう。シンセサイザーも使いましたが、当時の楽器での限界もあり、メロディを弾くときの音色の面白さ、という特色はあるもののELP時代のあいだの使い方は、やや限定的です。

キースはELPの結成前にもナイスという、よく似た構成のバンドに在籍していて、当時からすでにキーボード・プレイヤーとして高い名声がありました。ただナイス時代にはピアノとオルガンでの演奏にとどまっていたのに対して、ELPではシンセサイザーの導入と演奏方法の工夫など、大きな足跡をロックの歴史に刻むことになりました。

ですがピアノのソロなどでのプレイぶりは、すでにナイスにいた頃に確立されています。例えば3枚めのアルバムの冒頭の曲「Azrael Revisited」でのソロなどは、ちょっとチューニングを狂わせた(やや歪んだ音色の)ピアノで、独特のフレージングのソロを聴かせています。この曲はピアノとベースとドラム、そしてパーカッションでの演奏にボーカルが乗るという、ロックバンドとしてはまずめったにないサウンドが聴けます。

キースのELPでの音作りは、ナイス時代からの発展と展開と言えなくも無いのですが、なにしろベーシストの美声と音楽的なアイデア、ドラマーの突貫小僧ぶりが、ナイスで組んでいたプレイヤー達を遙かに凌駕しているために、多彩な音楽を生み出しています。私としてはやはり1972年の「Trilogy」と翌年の「Brain Salad Surgery」の2枚のアルバムが傑作の名に値すると思います。もちろんほかのアルバムも出来はいいのですが。

彼はごく最近、2013年3月20日のことになりますが、作曲家吉松隆さんの還暦コンサートに訪れて壇上にも登場し「ハッピーバースデー」を弾いたりもしています。このコンサートではELPのアルバム「Tarkus」のオーケストラ版(吉松さんの編曲)も演奏されています。この模様が楽しいのと、2013年でのキースの姿もアップされていますので、吉松さんの雑誌連載再録ブログにリンクを貼っておきますね。

それにしても亡くなったキースの頭部には銃弾の跡があり、状況から警察は自殺の可能性もあるということで捜査している、ということだそうです。生涯の終り近く、彼の心にはどのような思考が去来していたのか、「The Endless Enigma, Part One」という曲のタイトルが思い出されます。それはほかの人間にとっては謎、終りのない謎です。2016年3月10日、満71歳没。ご冥福をお祈りします。どうか安らかに。
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