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武満徹 「系図」を聴く [音楽]

普段から演奏会のスケジュールを調べたりはほとんどしないので、NHK交響楽団の第1833回定期のプログラムのことも知らないでいました。スラットキンさんの指揮での、ちょっとユニークな組み合わせの曲目が並んでいたのですが、たまたまNHK-FMを聴いていたので、公演の生中継を聴くことができました。

2曲目が武満徹作曲の「系図(ファミリー・トゥリー)―若い人たちのための音楽詩」でした。ちなみにここでの表記はNHKの演奏会の案内の表記に従います。この曲は、以前にも一度テレビでだったと思うけど、聴いたことがあって、その時はその響きや朗読される詩の言葉の連なりに感心したものでした。

ところがその夜の(22日の夜の)FMでの放送を聴きながら、どういうわけだか始まってすぐにじわりと涙がにじんでしまったかと思うと、そのあとはほとんどずっと止めどなくこぼれる涙を抑えることができないでいました。何かが、と言ってしまえばあとから考えてのことになりますが、やはり音の響きのしなやかさと詩の言葉の出会うところの何か、に心が反応してしまったのだろうと思います。

詩は「家族」を詠い、そして世界と向かい合う/溶け合おうとする「私」を詠っています。音楽は「私」を包み、時を超えて流れていく永遠の何かを奏で続けています。先日からの地震での報道が、私の心に影響を与えているのかも知れません。そこでもまた「家族」が出会わなくてはならなかった運命が多くあったことだろうと思うのです。

そうして聴きながら、演奏会場で聴いていたら周りに迷惑をかけていただろうな、むしろ家で放送を聴きながらであったのは助かった、なんてことも頭をよぎりました。静かに泣いているのならいいんですけどね。とてもそれだけじゃ済まなかったし。声は上げませんでしたけど。

あとから思ったことですが、語りの山口まゆさんの声も透明でいいけれど、ここは坂本真綾さんの声で聴いてみたいな、とも思いました。もっとも作曲者は12歳から15歳の少女が読むのが望ましい、と語っていたそうですので、指定からは外れてしまいますが。

朗読される詩は谷川俊太郎さんの作品の中から選ばれたものですが、言葉に湿り気の無い乾いて透明な響きで紡がれるもので、確かに少女の声は似合うと思います。あ、ここでは「乾いた」は「ドライな/素っ気ない」という意味では無くて、ある種の客観視された対象への「乾いて」いる言葉、と使っているつもりです。念のため。

とにかくまたしてもFMでいいものを聴かせてもらったわけで、タイミングが合ったのは嬉しいことでした。自分からすすんで機会を得たのではなくて、偶然が出会わせてくれたということには、感謝したいと思います。いい時間を過ごすことができました。
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