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大岡信さんと加川良さんのこと [ひと]

同じ日に亡くなったからと言って、このおふたりを並べてどうするんだ、と怒られそうな気もしています。まったく違った活動をしていらしたおふたりで、生まれた年も違うし。ただおふたりともに私にとっては、それぞれ違った時期に強い印象を受けていたことがありました。同じ日に亡くなったことは、私にとっては不思議な何かを感じることなのです。

大岡信さんは、「80年代の現代詩の不毛の中の、一陣の清新な風」といった評を見たことがあります。どなたが言ってらしたのかは忘れてしまいましたが。たとえば大変有名な「地名論」という作品でも、言葉の音楽、構成の巧みさといったテクニックからの凄さを感じます。しかしそれ以上に作品の完成度、詩としての「落ち着き、たたずまい」と言ったようなものが、とても美しいと思っていました。

こんな風に書ければいいのにな、というある種の憧れのようなものも感じていました。もちろんそんな風に書けないからこその憧れであるわけですが。私の大好きな作家、丸谷才一さんとも仲がよろしかったようだ、という点も好ましいものでした。ほかの方も交えてではありますが共著もありました。

加川良さんは、その出世作とも言うべき歌の印象が強く、そして歌声の力強さもまた大変素晴らしいものでした。それこそ「こんな風な歌声を発することができたなら」と思わせられます。その歌声には、確かな独自性があって、一度聴いたら忘れない声をお持ちでした。

私見ですが高田渡さんからの影響を受けていらしたようにも思いますが、高田さんと同じように、一途に自己の世界を投影した歌の世界を作り続けていたという点で、やはり唯一無二の歌い手であったと思います。地道な活動を続けていくことを選び取った、ということなのだろうとも思えるのです。

おふたりともに、2017年4月5日没。大岡信さんは満86歳、加川良さんは満69歳で亡くなられました。心よりご冥福をお祈りいたします。どうか安らかに。
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