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「アクダマドライブ」のこと [アニメ]

昨年10月からのアニメについての記事、第2弾は「アクダマドライブ」。私はこういう感じの絵柄の作品だと、ほとんど見ないことが多いんですが、主人公を黒沢ともよさんが演じる、ということを知って見てみることにしました^^。第1話と第2話の演出やスピード感、エピソードの連なりかたなど、かなり感心して見ていました。「サイバーパンク」というけっこう古い言葉を思い出したりもして^^。

始めはある種の「SFピカレスクロマン」だと思って見ていたんですが、何話めかで医者がかなり致命傷に近いんじゃないか、という傷でも治してしまう、というシーンが現れて、「ああ、SFというよりは一種のファンタジー」という感慨が湧き上がってきました。誤解を恐れずに言い切ってしまえば「ある種の魔法」。そして喧嘩屋が殴り合いの末に絶命するに至って、ファンタジーであるという認識は定まったのでした。

いわば喧嘩屋本人の意識の中にある「美学/ファンタジー/業(ごう)」に基づいて行動した結果の「死」。ほぼこの時点で、アクダマとして登場した人物たちは、最終的にはそれぞれの死を遂げるであろう、そういう物語として語られるのではないだろうか、と考えたのでした。

あとはカンサイの中での処刑課との闘争とカントウの謎をもうひとつの軸として、「7人のアクダマ」の行動と死の物語を見ていくことになります。7人。なかなか象徴的な人数ではありますよね。ハッカーが早くに退場したのは意外でしたが、「切り札」として再登場させるための退場なんだろうな、とは思っていました。

医者とチンピラが「相討ち」になるのは予想外ながら、なるほどこういう最期もありかなと思えるシーンでした。特に医者は「本人の思惑」とは外れた他者の意識によって命を落とすことになります。ふたりともそれぞれの思い描いていた「行動規範」にそって行動したものの、本人の想定を外れた死を迎えるわけです。まぁさすがチンピラだけに、医者の傷が即死には至らない程度の「ためらい」のある小さな傷だったなと。医者は容赦の無い大きさの傷をチンピラに負わせるわけですが。

殺人鬼もまた「どうしても殺したい」という「美学/ファンタジー/業(ごう)」を押し通したあげくに、死を迎えてしまいます。彼が一般人/詐欺師に見ていた「赤い輪」は、結局のところは彼女の「アクダマ度」を象徴するものだったのだ、と思いますね。そんなものが見えるというのも、特殊な能力ではあろうけど。ただ、見えた赤い輪の衝動に突き動かされた結果が死であったという。

ハッカーはやはりここぞと言うところで再登場となりました。カントウの状態をいみじくも「こんなSFみたいな」とか言ってましたけど、ご本人もデータ化を施すという、「SFみたい」な状態になってました。いわばデータの波を突破するという衝動から、ご本人のデータにも損傷を負って消滅してしまうという最期を迎えます。

さて一般人/詐欺師。さっきアクダマ度と書きましたけど、本人の意識としては「巻き込まれて」いたはずなのに、結局のところは兄妹を助けたいという意識から、アクダマ度を増していかざるを得なくなるという道をたどります。ただ、終盤にデマを飛ばして大衆扇動を仕掛けている時の表情は、けっこうな喜びに彩られていましたね。そして自らの死を賭しての「詐欺」を働くことで、完全に「詐欺師」になりおおせます。
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なるほど、という感じはありました。それにしても髪を短くし、「処女」のまま十字架に架けられて死ぬ。まぁ言うなれば彼女はジャンヌ・ダルクであったということでしょうか。大衆を動かすことで戦いには勝つという結果は得ていますね。

そして運び屋もまた自らに課した「美学/ファンタジー/業(ごう)」を完遂して死ぬことになります。彼のバイクなんだけど、ほとんど無尽蔵のエネルギーを持っているみたいで、その点もある種「ファンタジー」なのかな、と思います。数百メートルのジャンプをしても、着地して乗れているという点も含めて^^;。1980年代に「トロン」というSF映画がありましたけど、バイクの活躍はちょっとその作品を思い出しました。私は「トロン」はちゃんと見ていないんだけど^^;。

結局兄妹はシコクに進んでいくわけだけど、そこが必ずしも「救いの土地」であるか否かは明示されないわけですよね。むしろ「シコク=死国」ということだってあり得るわけで。このふたりの未来はどうなるのか、あるいはカンサイとカントウの関係性も、どうなってしまうのかは描かないままに物語は終わりを迎えます。なかなかのディストピアぶりだなぁと思います。

全体として声優陣は重厚かつ適役な人たちで固められていて、聞き応えがありました。私は榊原良子さんが大好きなんだけど、今回はまたずいぶんな悪役で、「艶のある声」はあまり聴けなかったのはちょっと残念^^;。主人公の黒沢ともよさんは、大変よく似合う役柄であったなぁと思います。チンピラ役の木村昴さんはすごく上手に演じていらしたなぁと感心していました。あと花守ゆみりさんが、私の知る声とはずいぶんと違った声で演じていらして、芸の幅を見せていただきました。

いずれにしても、私としては予想外の収穫のあった作品で、かなり楽しませてもらいました。作画の面などでの苦労はかなり大変だったんじゃないか、とか思います。キャスト、スタッフの皆さん、お疲れさまでした。2期はあるのかな。このまま終わってももちろん見事な物語だし、世界観の設定を生かして別なストーリーを作ることも可能かな、とは思います。楽しめる作品をありがとうございます^^。
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