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ブロムシュテット、N響のベルリオーズ「幻想交響曲」 [音楽]

10日間ほど家を空けてしまったので記事が書けませんでしたが、日曜の夜に放映されたN響とブロムシュテットの「幻想交響曲」は、出先で視聴することができました。少し書いておきたいこともあるので、ライブからは1か月半、放送からでも数日を経ていますが、記事にしておきます^^;。

んー、やはり「情」よりは「知」の演奏と言うべきなんでしょうか。音楽がとても純粋に響く、誤解を恐れずに書けば「主知的」な演奏であったと思います。特に弦の瑞々しさは素晴らしく、第1楽章冒頭の響きなどは、めったに聴けない極上の肌触りではありました。知的ではあるけど冷たくはなく、柔らかな響きはふわりと感情を覆って、音楽として響いてくるのです。

その第1楽章の冒頭から主部に移るところの、「ソシラ、ララソ、ミファレ」というところなど、もっともっとニュアンスやアクセントを付けて、纏綿と泣かせる振り方もありますけど、この演奏ではそれをしない。「ここはベルリオーズが啜り泣いているのです」と語ったのは、なんとあのアンセルメ先生ですが、ブロムシュテットさんはそれをやらない。素っ気ないわけじゃないけど、無用に思い入れず響きを重んじる演奏になっています。

第3楽章の終結部、イングリッシュホルンの問いかけにも答えは無く、ティンパニが遠雷を響かせる場面でも、もっとイングリッシュホルンに「こく」を付けて歌わせたり、ティンパニの響きを大袈裟にして、ドラマを演じさせようとしたり、といった演奏の仕方もありますが、やはりこのブロムシュテットの演奏では、そんなことをしない。だからと言って淡々と、ではないんですよ。歌は充分に響いている。

第4楽章で、金管がファンファーレ風に行進曲を演奏するところは、1回めのところでは弦が合いの手を入れるだけで、ほぼ完全に休んでいます。ところが2回めでは、金管が同じメロディを奏でているところで、弦は細かく激しくオブリガートを奏しています。ここも演奏によっては後ろの弦の響きが「何か鳴っている」ぐらいの感じだったりもしますが、今回の演奏ではバランスのきれいな響きになっていました。第4楽章のこのあたりのスコアは、惚れ惚れするほどの美しさなんで、ご興味のある方は、ぜひ一度ご覧になって見てください。

終楽章に入っても、こういった響きの確かさを重んじていくやり方が充分に生かされていて、見通しの悪くなるような部分はありませんでした。それなりにこだわりのある部分もあるようで「ここは全部下げ弓で」みたいな指示が出ているところが見えたりもします。終結部も大騒ぎしてガシャーンと終わると言ったような風情は全く見せずに終わります。

もっと狂気の轟くような演奏の仕方もあるでしょうし、その方が好きだと言う人もいると思います。それはそれでやり方としてはあるとは思いますが、今回のブロムシュテットさんの演奏で聴かせてもらえたのは、音楽としてのたたずまいを響かせている「幻想」でした。そうした意味では、ある種貴重なものでもあるのかも知れません。「受けは狙わないし不要」という、音楽として向き合おうという姿勢は重要だと思いました。

最後に話は前後するんだけど、この演奏では第1楽章と第2楽章のあいだに間を置かず、すっと演奏が始まりました。第4楽章と第5楽章のあいだもそうだけど、これはわりによく見かける気がします。でも最初のふたつのあいだで間を置かないのは、あまり記憶にありません。

第3楽章の前後には普通のインターバルがあるんですが、これってひょっとしてですけど、「全体を三つの部分に分ける」といったような考え方に基づいてたりするんでしょうか^^;。「第1部 恋の情熱」「第2部 孤独の彷徨」「第3部 悪夢と狂気」というような分け方は、以前からも解説されているのを見かけたりしますけど、ブロムシュテット先生はそれを演奏の上でもくっきりさせようとしていたんでしょうか。ああ、お会いして聞いてみたい^^。とにかくずいぶんと感心もし楽しませていただいた演奏なのでございました^^。
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