SSブログ

桂米朝さんのこと [ひと]

記事ふたつで続けざまに訃報を記さなければいけないことになってしまいました。桂米朝さんが亡くなられたとのこと。上方落語の重鎮であったのはもちろんですが、落語という分野の大きな星でもありました。柔らかな話ぶりや表情なども、お人柄を感じさせる方でした。

実感としてはもう10数年ほどのあいだ、高座を見ることは無かったように思います。もちろん生で、ということではなくTVなどでの放映でのことなんですが。なにしろ生で接する機会はありませんでした。TVなどで見ていると、崩れることのない折り目のきちっとした話芸であったように思います。

だからと言って堅苦しいわけもなく、いつの間にか引き込まれてしまう語り口と、汚れの感じられない上方言葉が心地いいのでした。もって生まれた声質の良さもあって、耳触りがとても良いのでした。私は関西に暮らしたことはありませんから、時として関西言葉は耳に障る気がするのですが、米朝さんの噺を聴いていると耳は心地よさを覚えるのです。

家では時として気難しさを見せることもあった、と言うのですが、高座での噺を聴き姿を見ていると、やはりどこかに厳しさをたたえる感じも受けることもありました。外には見せない研究熱心さに裏打ちされた、端正さと語り口とが合わさったきれいな芸風であったと思います。満89歳没。ご冥福をお祈りいたします。どうか安らかに。

金子國義さんのこと [ひと]

画家の金子國義さんが亡くなられた、というニュースが入ってきました。写真集を出していたり、油絵の画集もあったり、いろいろな活動はされていたのだと思いますが、やはり一般的には「挿絵画家」でありポスターなどのイラストレーターとして、知られていたのではないかと思います。

一度見たら忘れられない、とはよく使う形容なんだけど、この人の絵ほどぴったりくるのも珍しいかな。大変に個性的なのですけど、私は「少し成長して、いくらかひねてダークサイドに寄った麗子像(岸田劉生の)」みたいな感じかな、とずっと思ってました。いや似てるというわけじゃなくて、人物のとらえ方がね^^;。

新潮文庫版の「アリス」の挿絵を描いていらして、訳も含めていい感じの仕上がりになっていたと思います。新聞なんかも「アリスの挿絵(装丁)」といった紹介のされかたですね。ちなみに「装丁」は使っちゃダメ、「装釘」じゃなければ、というご意見の方がいらっしゃったようですが、新聞はいろいろ難しいよね。私は確かにハードカバーの書籍なら「装釘」の字は似合うと思います。

そういえば金子さんのお名前も表記は「國義」と、ずっと旧字を使っていらしたようです。やはりこれも「国義」にされちゃってる出版物もあったみたいですけど。まぁご縁が深かった澁澤龍彦さんが「全部旧字」でしたからね。ちなみにこの記事では「彦」の別字がどうしても無理みたいなので、こちらの字ですが。

まぁ「龍」の字は分かりますよね。こっちの「竜」の字と比べてやはりちょっとかっこいいし。大瀧さんも基本的にはさんずいに旧字の龍でした。この記事でもタグは「國義と国義」を並記しておきます。ご本人には失礼にあたるかも知れませんが、変換できない人もいると思うので。

閑話休題。金子さんの絵は、芝居のポスターに使われたりもしていて、私はとあるお店の壁にそういったポスターが貼られていて、一瞬息を呑むような気分を覚えた時があります。存在感のある絵なのでございます。「一目見れば」とか書かれても、そんな絵は見た覚えが無いよと言う方のために、画像をそのままではちょっと憚られるので、書籍の表紙をお見せしておこうと思います。満78歳没。ご冥福をお祈りいたします。どうか安らかに。

鏡の国のアリス (新潮文庫)


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。